最新ニュース エックスサーバーによるDNSサーバー機能の大幅強化
エックスサーバーやシン・レンタルサーバーにて、DNSのTTL値の編集やAAAAレコードなど新しい機能が追加されました。大きく4つの機能が追加されたのでそれぞれ見ていこうと思います。
1. TTL値の編集が可能に
TTL値とは?
TTL(Time to Live)値というのは、DNS(Domain Name System)情報がキャッシュされる時間を表します。DNSはウェブサイトのドメイン名から対応するIPアドレスに変換する「一時的な住所録」のようなもので、TTL値はこの変換情報をどれだけの時間キャッシュするかを定めます。
エックスサーバーではデフォルトが「3600(1時間)」になっています。
管理の効率化・最適化
TTL値の適切な設定は、サイトの応答速度を向上させるためにも重要です。値が短すぎると、DNSサーバーへの問い合わせが頻繁になり、反応が遅くなります。一方で値が長すぎると、DNS情報の「変更」が反映されるまでの時間が長くなり、リニューアルなどの際にウェブサイトが操作しづらくなることがあります。TTL値の編集が可能になることで、こうした点を柔軟に調整できるようになります。
「DNSキャッシュポイズニング」のリスク軽減?
DNSキャッシュポイズニングとよばれる攻撃があります。攻撃者が偽のDNS情報をキャッシュサーバーに挿入するもので、もしTTL値が短いとキャッシュが残りづらいため成功しやすくなります。逆にTTL値を長くすると、次の更新までの間攻撃を阻止できるとされてきました。
ただ実際にはTTLの長さに限らず攻撃の可能性はあるようです(参考:JPRS「新たなるDNSキャッシュポイズニングの脅威~カミンスキー・アタックの出現~」)。そのため「長ければ安全」とは言えなくなりました。
TTL値はよほどの理由がなければデフォルトのままでいいと思うよ。ただサイトリニューアルみたいにすぐにDNSを切り替えたいという時には短くするメリットはあるから編集機能はやっぱり便利だね。
2. 「Null MX」の設定が可能に
「Null MX」とは?
「Null MX」(ヌルMX)とは、特定のドメインに対してメールの受信を拒否する設定です。
通常「MX」レコードはメールの送受信を管理するものですが、逆にNull MXはメール受信を完全に拒否する特殊な設定です。
メールキューの蓄積を防ぐ
仕組みとしてはネームサーバーで拒否できるため、送信元のメールサーバーはすぐにエラーを返すことができるようになります。その結果、メールの送信側(外部)と受信側(エックスサーバー側)では下記のようなメリットがあります。
- 送信元
- メールキューがたまらない・サーバーリソースが節約できる
- 送信先
- アクセスが減る
単純に間違ったドメインに設定してしまうとメールが受信できなくなってしまうので注意!
3. IPv6に対応し「AAAAレコード」の利用が可能に
「AAAAレコード」とは?
IPv6はインターネットプロトコルのバージョンで、IPアドレスの数を飛躍的に増加させるために開発されました。「AAAAレコード」はそのIPv6アドレスを名前解決するためのDNSレコードです。
ちなみにこれまでのIPv4アドレスは「A」レコードでした。「A」から「AAAA」になっているのは、IPアドレスの長さが32ビットから128ビットと4倍に増えているからだそうです。
エックスサーバーはIPv6未対応
現在エックスサーバーはIPv6未対応のため、自らのサーバー設定には使用しません。外部でIPv6を設定しているサーバーに対して利用することになります。国内のレンタルサーバーの中では「さくらのレンタルサーバー」がIPv6に対応しています。
ただエックスサーバーもいずれはIPv6に対応することになると思います。この機能追加はそのための準備かもしれません。
参考:「IPアドレス – IPv4, IPv6」
4. 「NSレコード」の利用が可能に
「NSレコード」とは?
「NSレコード」は、ドメインネームシステム(DNS)内で特定のドメインに対するネームサーバーを指定するレコードです。
DNS管理の柔軟性と複雑さ
NSレコードが管理できるようになると、主ドメインやサブドメインのネームサーバーを変更できることになります。「サブドメインの委任」もこのNSレコードにて実現できます。
通常はドメイン管理会社にて「ネームサーバーを設定する」という機能が管理画面にあり、そこでのみ管理していましたが、柔軟にネームサーバーを設定できるようになる反面、やはり間違いやすくもなります。
ドメイン管理会社で設定したネームサーバー(whois情報)とは別のネームサーバーを指定できるため、意図しないサーバーを参照する可能性があります。
まとめ
今回の機能追加も、おそらく利用者の要望や今後の環境の変化に対応しようとしたものだと思います。
ただそれぞれきちんと理解しないと、操作を間違った場合に致命的なものばかりです。またこの変化を知らずにいるとNSレコードなどはトラブルの原因になるかもしれません。
ネームサーバーの操作はこれらの点に限りませんが十分注意しましょう。
エックスサーバーによるDNSサーバー機能の大幅強化について
- TTL値の編集は難しいので基本はデフォルトのままで
- メールを使用しないドメインはNull MXを設定する
- AAAAレコード対応はエックスサーバーの将来への伏線
- NSレコードが編集できるようになって混乱も生まれそう