コラム 初めてのレンタルサーバーの選び方
ここではレンタルサーバーを初めて利用するという人のために、一番はじめに何を調べたらよいのかをまとめます。自分がやろうとしていることにレンタルサーバーが相応しいのかどうか、また妥当な価格帯やサーバー会社の選び方などわかりやすく解説します。
そもそも「レンタルサーバー」でいいの?
サーバーにはいろいろな種類がありますが、調べれば調べるほど何が自分に相応しいのかわからなくなっていきます。本当に「レンタルサーバー」を選ぶべきなのか、という点をまず考えてみましょう。
どのようなサイトを作るのか?
まず「どのようなサイトを作りたいのか?」によって必要なものが変わってきます。大きく分けて下記のいずれかのサイトになると思います。
- 「ブログ」を作りたい
- 「自社サイト」が作りたい
- 「ショップサイト」が作りたい
以下、それぞれの対応方法について説明していきます。
ブログを作りたい場合
アフィリエイトサイトを含め「ブログサイト」を作りたいという場合、よく「WordPressがおすすめ」などと言われることが多いと思います。
WordPressを利用する場合は通常レンタルサーバーが必要になりますが、ブログサイトの起ち上げに必ずしもWordPressを利用する必要はありません。
よく見かける「note」や「はてなブログ」など一般のブログサービスを利用するという方法もあります。
この二つの違いは以下の通りです。
WordPressの特徴
- 起ち上げや管理に手間がかかる
- 広告もなく自由に作ることができる
- SEOに特化したテンプレートを利用できる
- レンタルサーバーなど自前でサーバーを用意する必要がある
「wordpress.com」など例外はありますが、あまりおすすめできません。
一般のブログサービスの特徴
- サーバー不要で簡単にスタートできる
- 広告などがつき、デザインの自由度は低い
- 有料プランにすることでできることが増える
ブログを作るという場合はこの二つの方法を検討してください。
もしWordPressを選びレンタルサーバーが必要という場合は、是非このサイトを参考に検討を進めてください。
自社サイトを作る場合
自社サイトというと少し狭い意味になりますが、ここでは下記のようなサイトを想定しています。
- 企業がサービス情報を掲載する「自社サイト(コーポレートサイト)」
- 飲食店の「メニューやアクセスの店舗情報サイト」
- カメラマンの作品を掲載する「ポートフォリオサイト」
これらの特徴としては、ほぼ固定した情報を掲載し、主に「看板」としての役割を持ったサイトになります。またお客様向けの印象作りのため、デザインも作り込みが必要です。
こうしたサイトの場合、通常は業者に依頼します。サーバーも業者が選定するため、レンタルサーバーについて検討する必要はないかもしれません。
ただ一方であまり予算をかけられず、社内のリソースまたは自分自身でサイトを作りたいという場合も多いと思います。
業者に依頼する場合
- 未経験者によるレンタルサーバーの利用は困難
- 業者へ依頼することが前提
- サーバーは業者(専門家)が選定する方が良い
- ドメインとサーバーの「取得」は自社で行う方が良い(将来、業者を変更する可能性を考慮)
- 社内のメールアドレスもレンタルサーバーで運用できる
社内・自分自身で対応する場合
- ブラウザ上で自らページを作りサイトとして公開できるサービスの利用を検討
(「STUDIO」「Ameba Ownd」など) - 担当者に一定のデザインスキルが必要
- レンタルサーバーは不要だが、ドメインは必要
- メールアドレスが必要な場合、別途レンタルサーバーなど用意する必要がある
サイトに関してはどちらもレンタルサーバーの知識はあまり必要ないかもしれません。
ただ見落としやすいのが「メールアドレス」です。メールを管理する場合、レンタルサーバーなどが必要になります。運用が始まるとメールサーバーはなかなか動かしづらく、将来性がとても重要です。慎重に検討してください。
ショップサイトを作る場合
ショップサイトを作る場合はレンタルサーバーの取得は必ずしも必要ありません。
通常は「カラーミーショップ」や「STORES」などカート機能などが含まれたショップサイトサービスを利用します。「楽天」や「Amazon」なども選択肢に入ります。
ただし下記の場合は同時にレンタルサーバーが必要になるのでご注意ください。
- 取得した独自ドメインでメールアドレスを運用する場合
- ショップサイトとは別に、ブランドサイトやコーポレートサイトを作る場合
「レンタルサーバー」の難易度は中級レベル
上に書いたたように作るサイトによって、また作る人員やそのスキルによって必要なサーバーは変わってきます。
サーバーにはおよそ下記の三種類があり、それぞれ難易度が違います。
初級レベル:「ツールやサービス」
ブログサービスやショップツールなどASP(Application Service Provider)と呼ばれるものです。これらはサーバーというイメージではなく、ブラウザで操作できるサイト管理ツールです。表面的なものを管理するだけで、できることも限られますが、誰にでも簡単にサイトを作ることができます。
中級レベル:「レンタルサーバー」
「レンタルサーバー」を使ってサイトを作る場合、一番大変なサーバー管理は運用会社が行ないますが、サーバーを使う側の操作は自ら自由に行うことができます。WordPressの利用もこのレベル以上が必要です。ただ誰でも操作できるというものではありません。利用するには言葉の意味やスペック、機能などしっかり把握する必要があります。
上級レベル:「専用サーバー、VPS、クラウドサーバー」
イメージとしては1台まるごと自ら管理するサーバーです。完全に自由になる反面、セキュリティ面の対応など管理はとても難しいものになります。専門家を目指すのでなければ、基本的に手を出す必要はありません。シンプルなサイトにも関わらず、業者からこうしたサーバーを提案される場合は注意しましょう。
スペックはどう比べたらいいの?
スペックの比較は重要です。ただサーバー会社同士で研究し合っているためか、各社のスペックはかなり似通っています。そのため、まずはスペックの違いを見つけましょう。
その中でいくつか注意すべき点があります。
スペックの意味がわかるまで数字だけで比較しない
例えば「ディスク容量」は比較する必要はありません。サイトに必要な容量はせいぜい100MBほどですが、ほとんどのサーバーが100GB(=100,000MB)以上なので、見るべき数字ではありません。サーバー会社が他社を見て、最も簡単に操作できるスペックの一つでもあります。
ディスク容量に限らず、スペックの違いを見つけたら、本当に意味のある違いなのか調べてみましょう。
サーバーの安定性は比較しづらい
サイトを常に表示するためサーバーの安定性はとても重要です。ただスペックからはどうしても見えにくい部分です。
そのため「バックアップ」の仕組みや「稼働率の保証(SLA)」など、安定しなかった場合の対策を確認してみましょう。
表示速度に関するスペック
現在「サイトの表示速度」がとても重要視されています。
普段、表示が遅いサイトに出会うとウィンドウを閉じてしまうことも多いと思います。SEOにも大きく影響するため、各レンタルサーバーも速度を競っています。
ただそのせいでどのサーバー会社も「速度No.1」を謳っているという問題もあります。もちろん嘘ではないと思いますが、特定の時期や独自の計測方法による結果なので鵜呑みにはできません。
表示速度は重要ですが、事前に判断するのは難しいということも把握しておきましょう。今シェアの多いサーバーはどこも一定の速度品質だと思います。あまりシビアにならなくてもよいと思います。
一つ言えることとしては、新しいサーバーほど良いスペックが採用されているため速くなっています。エックスサーバーなどでも定期的にサーバーの仕様が改善されていたり、同じサーバー会社でもプランによって新旧の違いがあったりします。「サーバーの新しさ」は速度面の判断基準になります。
レンタルサーバーの信頼性ってどう調べたらいい?
大切なサイトを預けるレンタルサーバーですが、結局スペックだけでは決め手に欠ける場合が多いと思います。
一つの考え方としては「取得したその日に障害が発生しても許せるかどうか」という点を想定しておくとよいかもしれません。それにはやはりサーバー会社への「信頼」が必要になります。
利用する前から信頼するというのは難しいのですが、ある程度信頼のための材料は集められます。
企業規模よりもサーバー事業へのリソースのかけ方
例えば、シェアが多いレンタルサーバーの中では「ロリポップ」を運営する会社「GMOインターネット」の企業規模がおそらく一番大きいと思います。時価総額も他社とは桁違いです。
実際に運営しているのはそのグループ内の「GMOペパボ」という会社ですが、グループ内全体としては似たようなサービスが多くあり、「ロリポップ」はその中の一サービスです。そうすると、例えばグループ全体の方針によってはサービスの集約や停止などもありえそうです。規模が大きいことによるリスクというものもあるかもしれません。
個人的な印象ですが、どちらかというとその会社全体でレンタルサーバー事業にかけているリソースの割合の方が信頼性にはつながるように思います。「エックスサーバー」や「さくらインターネット」はその割合は高くなっていると思います。
口コミから信頼性をどう判断すべきか?
レンタルサーバーも口コミをまとめているサイトが多くありますが、口コミについては下記のような見方で評価してみてください。
- 具体的な数字や実績でメリット(デメリット)を記載しているもの
- 特定の被害に遭った、というものはレアケース
- 実際にあったサポートの対応は会社の方針などが見える
またレンタルサーバーは本来インフラのようなものなので、優れたサーバーほど存在感がありません。
サーバーの障害などが書かれた口コミより、シェアが多いにも関わらず口コミが少ない、または印象がぼんやりとしているものは良い意味で捉えてもよいかもしれません。
利用者数とその増減を確認する
利用者が常に正しい判断をしているとは言えませんが、レンタルサーバー間を移動する全体の流れが参考になることもあります。各社から実際の数字は公開されていないと思いますが、下記サイトでは独自の調査結果が確認できます。
世界最大規模のウェブホスティング情報センターです。世界中の数千のホスティング会社とサービスをカバーしています。
こちらを見ると単純なシェアとしては「エックスサーバー」と「ロリポップ」、「さくら」の三強のようです。
ただ各レンタルサーバーで細かな「プラン」の分類もあるため、かなりざっくりとした数字になります。
例えば、エックスサーバーの中では各プランほぼ同一の品質で、リソースの違いしかないためほぼ数字通りのシェアと考えてよいと思います。
ですが、ロリポップやさくらは現在プランによって品質がかなり異なります。数字はおそらく古いプランも多く含まれているため、実用に耐えうる新しいプランの利用者を考えると、表示されている数字より案外少ないかもしれません。
そう考えるとエックスサーバーの数字はかなり大きいシェアと言えそうです。
電話サポートの有無やサポートの必要性
あまり慣れていない社員の方がホームページ担当になるということもあるため、レンタルサーバーに電話サポートがあるかどうかで信頼性は変わってきそうです。
ただ電話サポートの有無というより、重要なのはサポート自体の質なので、この点を重視している場合は、事前に不明点を問い合わせてみましょう。電話がつながる時間帯も確認が必要です。サポートも教育されているとは言え、人それぞれ対応レベルは異なるので一度の対応で判断せず、何度か確認するようにしましょう。
またサポートの質はどちらかというと、初心者向けの対応よりも少し高度な質問への返答にこそ違いが現れます。全く意味を理解していない返答をされると本当にがっかりします。その後、何度も同じやりとりが続くケースもあります。
個人的な経験としては、エックスサーバーやさくらのレンタルサーバーへの問い合わせは、一度でかなり的確な返答が返ってくるという印象があります。
レンタル料金の相場や妥当な金額は?
「料金」もスペックと同じく、同等のサーバーであれば各社横並びです。
逆に金額が近いもの同士を比較して、スペックの違いなど見つけていくと効率がよいかもしれません。
具体的には1,000円前後が目安
月におよそ1,000円支払うとどのサーバーも安定して運用できる印象です。年間12,000円ほどなので、個人でなければ経費としてもかなり安価です。
専用サーバーなどの場合、月に最低でも数万円も支払うことになり、さらに管理コスト(人件費)も別途発生します。
レンタルサーバーがなぜ安いのかというと、本来かかるそうしたコストを多くのユーザーで分け合っているためです。そのデメリットももちろんありますが、ほとんどのサイトにはその分け合ったリソースで十分というのが現実です。
契約期間と月額料金の関係について
どのレンタルサーバーも長く契約すると月額料金を安く設定している場合があります。月額料金の表示に「○円〜」という幅があるのはこのためです。
3年など長く契約した場合の金額が書かれているため、実際に申請すると契約期間によっては少し高いと感じてしまうかもしれません。事前に料金ページをよく確認しておいてください。
ただ長く契約したい場合も、1年程度に抑えておくことをおすすめします。
選んだレンタルサーバーに不満が出てくる場合や、契約期間中により良いサーバーを見つける可能性も十分にあります。リスク管理としてサーバーは常に移動できるようにした方がよいため、その点も踏まえながら契約期間を決定してください。
同じレンタルサーバーのプランの違い
レンタルサーバーを決定した後で迷うのが「プラン」ですが、判断するには2通りのパターンがあります。
プランごとにサーバーの仕様が大きく異なる場合
「ロリポップ」などがそうですが、プランごとにサーバーの品質が大きく異なります。この場合、判断は難しくなりますが、新しいプラン、速度を重視したプランを優先して調べてみてください。
プランごとにリソースだけが違う場合
「エックスサーバー」などがこれにあたりますが、サーバーの仕様がわかりやすく段階的になっているものは、「最下位のプラン」でスタートすることをおすすめします。
契約した後でリソースの不足などを感じる場合は、その時に初めて上位プランへ移行します。通常、上位プランへの移行に無駄なコストや手間はかかりません。逆に下位プランへ移行できない(しづらい)場合があるので、むしろ最下位のプランを経験しておく必要があります。
どちらの場合も、事前にプラン変更の方法については確認しておきましょう。「よくあるご質問」などでプラン変更に関する説明ページがあります。
また実際にプラン変更をする際、本当に上位プランで問題が解決するのか判断に迷いますが、その際は状況をサポートに伝え、上位プランにすることで解決するかどうかを問い合わせることもできます。
「初めてのレンタルサーバーの選び方」のまとめ
- 「レンタルサーバー」を利用すべきか検討する
- スペックは各社の違いを見つける
- スペックの意味がわかるまで数字だけで判断しない
- サイトは表示速度が重要 そのためのスペックを確認
- 自動バックアップがあるかどうか
- 口コミやシェアを正確に見る
- 月額料金はほとんどのケースで1,000円前後が妥当
- スタート時点では下位プランを経験しておくべき
サイト作りを行うという状況は様々だと思いますが、初めてサーバーに関わるという場合、レンタルサーバー以外にも手段があるということは知っておいた方が良いと思います。
またレンタルサーバーの取得自体は簡単ですが、知識がない場合、利用するのは決して簡単ではありません。業者へ頼む場合もも含め、スペックなどはある程度知っておいた方が良いと思います。引き続きこのサイトも是非参考にしてみてください。