スペック解説 レンタルサーバーの「容量・ディスクスペース」を理解する

レンタルサーバーを選ぶ際、思いのほか悩むのが「容量・ディスクスペース」です。ホームページを作る際、画像やテキスト、さらにはメールのやり取りで使うメールデータなど様々なデータの置き場所、またその容量が重要な課題になります。初めての場合、どのくらい必要なのか、どう選べば良いのかなかなか判断が難しい部分です。また現在のレンタルサーバーのディスク容量はかなり大きくなっているため、使い方によっては比較すべきスペックとしては重要でないというケースもあります。ここではそうした「容量・ディスクスペース」をどう考えるべきかをまとめています。

ウェブサイトのデータ容量 基本知識

ウェブサイトを作る際、最初に考えるべきはウェブサイトのデータ容量、つまりあなたのサイトがどれくらいのスペースを必要とするのかという問題です。これは人によって本当に様々で、規模や内容により大きく変わってきます。

まず思いつくのは、Webページそのもの、つまりHTMLファイルなどのテキスト情報です。こうした文字情報は非常に少ないデータ容量で済みます。ブログなど文字情報が主なサイトではかなり少ないデータ容量で運営可能です。ほとんどのレンタルサーバーで全く問題はありません。

ただ、画像や動画を多く含むウェブサイトの場合は注意が必要です。これらのファイルは、テキストとは比べものにならないほどデータ容量を大きく消費します。特に高解像度の画像や長時間の動画を掲載する場合は、相当なディスクスペースが必要になってしまいます。

また、データ容量に関連して、それを配信するため、データ通信量も大きくなってしまうという点にも配慮しなくてはいけません。大きな画像や動画をサイト上に設置し、ありがたいことに訪問者が増えた場合、かなり大きな通信量が必要になります。

さらにウェブサイトのデータは定期的にバックアップを取る必要があります。自らバックアップする場合などはバックアップに相当な時間がかかります。またレンタルサーバーによってはこれを自動で行いますが、もしデータ量が多すぎる場合、正しくバックアップできないという可能性もあります。

以上のことから、まずは自らのサイトを運営するためにどのくらいのデータ容量が必要になりそうかを考える必要があります。ただもちろん最初からすべてを正確に計算することはできません。およそ必要になると思われる容量のイメージを、以下の項目でご説明いたします。またおよそ必要な容量が推定できた場合も、十分な余裕を持って容量・ディスクスペースを決定するようにしてください。

サイトが扱うファイルの種類と具体的な容量

ウェブサイトを作るとき、扱うファイルの種類によっても必要なディスクスペースは変わってきます。ここでは、主なファイルの種類とそれぞれが占める容量について簡単に説明します。

テキストファイルはあまり検討しなくてよい

まず最初にテキストファイルです。HTMLやCSS、JavaScriptなどのテキストベースのファイルは、非常に少ないディスクスペースを使用します。例えば、1,000語程度のテキストデータは約4KB(キロバイト)程度です。ブログ記事や情報提供型のサイトはこの種のデータが中心となるため、必要なディスクスペースはほとんど考える必要がないほど少なく済みます。

画像ファイルはやや重要

次に画像ファイルです。これはウェブサイトの見栄えを良くするために欠かせない要素ですが、一方でディスクスペースを大きく占める可能性があります。JPEGやPNGといった一般的な画像ファイルは数百KBから数MB(メガバイト)程度となることが多いです。これらのファイルを大量に扱うウェブサイトでは、相応のディスクスペースが必要となります。

ただし、現在スマートフォンなどのモバイル環境を踏まえ、画像のサイズは極力抑える必要があります。あまり大きなデータにはできないという点も注意しましょう。

またWordPressを利用する場合、アップした一枚の画像を、様々なサイズで複製します。そのため、アップしたオリジナルの画像ファイル以上のディスクスペースが必要になります。

例えば、下記のような計算ができます。

  • サーバーの最大容量が100GB
  • その半分の50GB(50,000MB)を画像用の領域と決める
  • 1枚2MBの画像をアップする
  • 50GBの中に、25,000枚保存できる
  • ブログ1記事の中に10点の画像をアップする
  • この場合、2500件の記事が書けます

やや特殊な動画ファイル

動画ファイルはさらに大きな容量を必要とします。一分間の動画は画質にもよりますが、一般的には数十MBから数百MB、高画質のものでは数GB(ギガバイト)にも及びます。動画コンテンツを提供するウェブサイトでは、十分なディスクスペースを確保する必要があります。

ただし、大きな動画ファイル、具体的には1ファイル数十MB以上のファイルをサーバーにアップして、そのまま配信するというのはあまり現実的ではありません。サーバーの容量に問題がなくても、それを閲覧する側は、一人一人そのファイルをダウンロードして動画を視聴します。その際、ダウンロードにかかる通信時間とその通信容量が膨大となります。時間は閲覧者が了解していればよいのですが、配信に必要な膨大な通信容量はレンタルサーバーで規制され、最悪はサーバーの利用停止となります。

参考スペック解説「データ転送量・通信量」

レンタルサーバーで利用できる動画としては、例えばアニメGIFを少し発展させた程度のものや、容量が画像レベル(1〜3MBほど)であれば許容範囲です。それ以上の一般的な動画ファイルはレンタルサーバーでの設置はほぼ不可能と考えてください。

幸いそれをカバーするため「YouTube」などのサービスがあります。もし動画を必要とするサイトを検討されている場合は、一度YouTubeに動画をアップし、その動画を自らのサイトに貼り付けるということが可能です。これはYouTubeのサーバーを利用して、自らのサーバーに一切の負担をかけない方法になります。

このため、レンタルサーバーでの動画配信は基本的には不可能と考えて、ディスク容量は気にしなくて良いと思います。

メールサーバーとディスク容量 長期利用を視野に入れて

見落としがちな点ですが、メールサーバーとしてのディスク容量もレンタルサーバーの選択において重要な要素です。メールサーバーというのは、あなたが送受信するメールを管理し、メールデータを保存する場所を指します。

メールデータもかなりのディスクスペースを占めます。一通のメール自体はテキスト情報が中心なので、そこまで大きな容量は必要としませんが、日々の業務で大量のメールを送受信したり、メールに添付ファイルがある場合はそのデータも全てサーバーに保存されます。特に大量のPDFや画像などをメール添付でやりとりする場合は、かなりのディスクスペースが必要になります。

メールが受信ボックスに溜まっていくと、一人で数GB使用することも稀ではありません。仮に一人3GBの容量を想定し、30人の社員がいる場合は90GB必要という計算になります。ただ一人3GBで30人分のメールアカウントを作成した際、すぐに90GBの容量が使えなくなる訳ではありません。あくまでも上限の値を設定しているだけなので、利用していく中でディスクを少しずつ消費していく形になります。

メールサーバーの受信方法としていくつかの形式がありますが、現在PCとスマートフォンの両方、つまり複数の端末からメールを管理するケースが一般的なので、メールデータはサーバーに保管する設定になっていることがほとんどです。もしメールをサーバーからダウンロードしてしまう設定にしていると、PCでは読めてもスマートフォンで読めないということが起こります。

またビジネス利用では法令により一定期間メールの保存が必要な業種もあります。同じメールを複数の担当者が確認する場合や、問い合わせ対応などで過去のメールを参照するなど、サーバー上でのメールの保存は重要です。そのためメールサーバーとしても長期的に十分な容量を確保する必要があります。

ここではディスク容量の話から、メールの運用について説明しているけど、できればウェブサイトのサーバと、メール用のサーバは分けておく方がいいよ。

えっ? 同じサーバで運用するのが普通じゃないの?

そうなんだけど、メールサーバの引越しってすごく大変なんだよね。だから将来いいなと思うサーバが現れてもメールサーバのせいで、より良いサーバにサイトを移行できないってことになりやすいんだ。

レンタルサーバーの容量と料金をどう選ぶ?

実際にレンタルサーバーを選ぶ際、一番大きな検討課題は「価格・プラン」です。ただそのプランごとにディスク容量が比例して大きくなっていく点が利用者を迷わせます。サーバーの「容量」は大きければ大きいほど、多くのデータを保存できますが、必要以上に大きな容量を選ぶと無駄な出費になってしまういます。

またサーバー内のデータ量は日々増えていくので、突然容量が足りなくなるとウェブサイトやメールサーバーの運用に支障をきたします。上に書いたようなサイトの仕様やアップするファイルの種類をしっかりと踏まえて、必要な容量を見極め必要なプランを設定しなくてはいけません。

さらに万が一、容量が足りなくなった場合にどうするかも考えておきます。決定したレンタルサーバーの中で、簡単に上位プランへの変更ができるかどうかを確認しましょう。サポートページやよくあるご質問などのページに記載されています。サーバー選びの際には必ず確認してください。また「サーバーの拡張性」については後述します。

SSDとHDD、どちらのディスクタイプが適しているか?

レンタルサーバーを選ぶ際、ディスクの種類についても理解しておきましょう。主に「SSD(Solid State Drive)」と「HDD(Hard Disk Drive)」の2つのタイプが存在し、それぞれ異なる特性を持っています。

ここでは簡単に触れますが、古くからある「HDD」は回転する磁気ディスク(プラッタ)上に物理的にデータを書き込みます。一方の「SSD」は電子的な回路を使用してデータを保存します。常に動いているのがHDD、全く動いていないのがSSDです。SSDは高速なデータアクセスが可能で、より静音で用途に耐久性があります。

詳細は「ストレージの種類 HDD・SSD」にまとめていますのでご覧ください。

ただ現在、ほとんどのレンタルサーバーが「SSD」を採用しています。ウェブサイトの応答速度を重視し、より高速なデータアクセスが可能です。大規模なウェブサイトや、多くのユーザーからのアクセスを処理する必要があるウェブサイトでは、SSDの高速な読み書き速度が効果を発揮します。

バックアップと容量、安全性を確保するには

ウェブサイトの運営やメールの保管において、「バックアップ」は絶対に欠かせない作業です。しかし、バックアップを取ることで必要となるディスク容量についても理解しておくことが大切です。

バックアップというのは単にファイルをコピーすることではなく、別の場所に保管することを指します。これにより、サーバー内のトラブルでデータが失われてしまったとしても、バックアップから元の状態に戻すことができます。ただバックアップを取るということは、元のデータと同じだけのディスク容量を追加で必要とすることを意味します。

たとえば、ウェブサイトのデータが10GB存在する場合、これを全てバックアップするためには追加で10GBのディスク容量が必要となります。これが定期的にバックアップを取る場合、さらにその分のディスク容量が必要となることを覚えておきましょう。

ただしレンタルサーバーで提供している「自動バックアップ」という機能は、プランの中でのディスクスペースを消費しないケースがほとんどです。機能の有無とその内容についてよく把握しておきましょう。

また、自らのPCにバックアップを取ることも重要です。頻繁でなくても、半年に一度などダウンロードすることも計画に含めておきます。ただあまりに容量が大きくなるとかなり大きな作業になります。サーバー内の役割を考えて、データ保管庫のようにならないよう、設計段階でコンパクトにしておくことも重要です。

全てのデータを失うリスクを考えると、バックアップは必須です。サーバー選びの際にはバックアップの頻度や方式、そして必要な容量についてしっかりと考え、安全性を確保するための適切なプランを選ぶことが大切です。

バックアップ方法の仕組みなど詳細については「バックアップ・RAID」にまとめています。詳しく確認したい方はこちらをご覧ください。

サーバーの拡張性、ビジネスが成長するときの準備

ウェブサイトやビジネスが成長すると、それに伴い必要なディスク容量も増えていきます。これを見越して、最初から大容量のサーバーを選ぶというのはあまりよい方法ではありません。ウェブサイトやビジネスの成長は予測が難しいため、それに合わせてサーバーの容量を柔軟に変えられる「拡張性」について考える方が得策です。

レンタルサーバーの拡張性というと、ビジネスが成長するときに必要なリソース(ディスクスペース、メモリなど)を必要になった時に、自由に追加できることを指します。

サーバーの拡張性はビジネスの急成長や季節的な需要の変動など、様々な状況に対応するための重要な要素です。ある日突然ウェブサイトのアクセス数が増えた場合でも、サーバーの拡張性があれば迅速に対応することが可能です。

初めてレンタルサーバーは、容量が少ないプランから始め、ビジネスの成長に合わせて段階的に容量を増やしていくという方が賢い選択です。これにより初期費用を抑え、後から起こる問題への不安も取り除けます。

レンタルサーバーはほとんどの場合、上位プランへの移行は容易にできています。ただ下記の点は確認しておきましょう。

  • それができるのかどうか
    レンタルサーバーのマニュアルやよくあるご質問から
  • 実際に何ができるのか
    ディスク容量、メモリー、CPUなどどのリソースを増強できるのか
  • どのように行うのか
    アップグレードの申請方法、プランが切り替わるタイミング、料金の変更時期など

データセンターの地理的な位置とディスク容量

日本のレンタルサーバーを選ぶ際は特に、あまり意識しない点としてデータセンターの地理的な位置があります。データセンターというのはレンタルサーバーそのものが物理的に設置されている場所のことを指します。

データセンターの位置はウェブサイトの表示パフォーマンスに直接的な影響を与え、間接的にはディスク容量の使い方にも関係します。

まず、ウェブサイトの表示パフォーマンスに影響を及ぼす理由は、その距離がデータの送受信速度に関係するからです。データは物理的な距離を移動するため、データセンターがユーザーの位置から遠ければ遠いほど、ウェブサイトのロード時間が長くなる可能性があります。つまりあなたの主なユーザーが日本にいるのであれば、日本に近いデータセンターを選んだ方が良いということです。

次に、ディスク容量について考えてみましょう。ウェブサイトのパフォーマンスを向上させるためには、必要なデータを可能な限り迅速にユーザーに提供することが重要です。しかし、データセンターが遠いと、それだけデータ転送に時間がかかり、ウェブサイトの応答時間が遅くなる可能性があります。その結果、ユーザーがウェブサイトから離脱するリスクが高まります。これもバックアップと同様、サーバー上でのデータ配置の設計という部分になります。常に大量に、かつ大きなデータが配信されるという場合は、データセンターの距離が関わってきます。

ただ日本のレンタルサーバーのほとんどは日本にデータセンターを持ち、日本の中であれば、そこまで大きな違いはありません。ただ閲覧者として海外のユーザーを想定している場合や、レンタルサーバーによってはデータセンターが海外にあるというケースもあるかもしれません。ほとんど意識しない部分なので注意しておきましょう。


容量・ディスクスペースのまとめ

  • ウェブサイトやメールのデータ量を考慮し、適切なディスク容量を選ぶ
  • さまざまな種類のファイル(テキスト、画像、動画など)があり、それぞれの特徴を理解することで、必要なディスク容量をより見積もることができる
  • メールサーバーの使用量は、時間と共に増加するため、長期的な視点で計画する
  • レンタルサーバーの料金と容量の関係を踏まえて最適なプランを選ぶ
  • バックアップを踏まえたデータ設計を行う
  • レンタルサーバーは将来の成長に対応できるよう拡張性を検討しておく
  • データの設計はデータセンターの地理的位置も影響する